公開シンポジウム「恐怖を哲学する―フィアー・ホラー・テラー―」

公開シンポジウム「恐怖を哲学する―フィアー・ホラー・テラー―」

主 催:日本学術会議哲学委員会
共 催:日本哲学系諸学会連合、日本宗教研究諸学会連合

日 時:平成29年12月9日(土)13:30~17:00

場 所:日本学術会議講堂
趣旨:
恐怖という情動/感情は、これまで哲学の主題になることが少なかったかもしれない。それは、笑い、絶望、不安といった情動に比べて、恐怖はどこか人間的ニュアンスに欠けた、原始的なものとみなされているからではないか。たしかに、恐怖を感じ、それによって動かされるのは人間だけではない。他の動物も、敵に襲われると恐怖の表情を浮かべて叫び声をあげ、逃げたり隠れたりする。おそらく、動物は進化の過程で外敵から身を守るために恐怖という情動を身につけたのだろう。
人間も、こうした古くからの恐怖のシステムを使って生きている。しかし、人間は高度な表象能力も身につけたために、おそらく他の動物にはできないことができるようになった。それは、「今その場にないものを恐れる」ということである。動物にも見られる原始的な仕組みを使って、動物には決して恐れることのできないことがらを恐れることができる。これはとても興味深い人間的現象である。この能力のおかげで、一方で、人間は古来、連綿と続く娯楽のジャンル、「ホラー」と呼ばれるものを手に入れた。他方で、この能力があるおかげで、人々を操作し支配する新たなやり方が生まれた。恐怖によるコントロールである。「テロリストが来る(かもしれない)」「◯◯人が水に毒をまぜた(かもしれない)」。今そこにないものへの恐れを巧みに煽ることで、人々は容易く操作され支配に屈し、異文化間の相互承認はストップする。
このように、動物と共有しているのに、動物にはない楽しみと悲惨さをわれわれにもたらす恐怖は、興味深いと同時にきわめて重要かつアクチュアルな思想的主題である。本シンポジウムでは、われわれに深く根ざした恐怖という情動の本性を明らかにし、「現実の方がよっぽどホラーだ」と言いたくなる現代社会においてそれとどのように対峙していけば良いのかを考える。

司会
岡田真美子(日本学術会議第一部会員、中村元記念館東洋思想文化研究所研究員)

報告者
三嶋輝夫(元青山学院大学教授)
「古代ギリシャ哲学、文学における恐れ」

佐藤弘夫(日本学術会議連携会員、東北大学大学院文学研究科教授)
「聖衆から幽霊へ ―闇から現れるものたち―」

石田美紀(日本学術会議連携会員、新潟大学人文学部准教授)
「幽霊からゾンビへ ―現代ホラー映画の流れ―」

藤原聖子(日本学術会議第一部会員、東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「ゾンビからテロリズムへ ―現代「畏れ」・「恐れ」考―」

ディスカッサント
戸田山和久(日本学術会議第一部会員、名古屋大学大学院情報科学研究科教授)

日本学術会議哲学委員会主催シンポジウム2017