日本宗教研究諸学会連合研究奨励賞

国際的に見て、日本の宗教研究の長所の一つは多様性にあります。本連合は、その多様性を時代に即した方法により更新しつつ維持するという観点から、特に意義の高い研究プロジェクトを振興します。
宗教研究分野の個人・共同研究プロジェクトのうち、独創性、実現可能性、予想されるインパクトにおいて際立ったものを表彰するため、「日本宗教研究諸学会連合研究奨励賞」を創設いたしました。
詳細はこちらをご覧ください。

2021年度受賞者

奨励賞受賞者

1.「宗教概念批判を経由した宗教哲学の可能性についての総合的研究」
研究代表者 下田和宣
研究分担者 樽田勇樹、根無一行、古荘匡義、山根秀介

プロジェクト概要

 近年の宗教研究のあり方を考えるうえで、20世紀後半以降に展開されてきた、いわゆる宗教概念批判の議論は大きな意義を持つ。19世紀以来の西洋近代宗教学は、「世俗」と切り分けられた精神的・私秘的領域として、「宗教」を実体化・体系化してきた。いまや宗教概念形成に対する系譜学的批判が徹底されることで、従来の宗教学・宗教哲学が依拠していた思考の枠組みに対する根底的反省が可能となる。そこでは「宗教/世俗」の二項対立のみならず、宗教/哲学、信仰/知、あるいは宗教哲学/宗教史学というディシプリンとして仮構された対立、さらには文化地理的な分断を促進する東洋/西洋といった広く支配的な思考枠組みもまたラディカルに解体される。
 とはいえ、本プロジェクトはそれらの従来の道具立てに対する無効化と清算に向かうものではない。むしろ系譜学的批判を経由することではじめて可能となる仕方で、宗教哲学研究の積極的なあり方を模索するものである。宗教概念が持つ諸問題を一括で断罪し処理しえたとしても、さまざまな言説領域でなお宗教の語りが求められている。したがって、宗教概念をただ手放すのではなく、むしろ宗教概念の受容・継承と新たな意味付与、これまでにない仕方での概念使用へと、目を転ずることが必要だろう。それは従来の思弁的・あるいは体験的な宗教哲学とは異なる研究地平に立脚することでもある。「宗教とは何か」という問いに沈潜するのではなく、その問いがいかに発せられ、どのように機能するのか。他に選択の余地なく宗教という言葉に何かを見込み、そこに賭けざるを得ない状況とはいかなるものであるか。このような視座を構えることで、宗教概念を称揚するのでも断罪するのでもない仕方で、宗教の真実性と虚構性の狭間に位置する人間学的事実へと思考を開く。それにより、例えば公共空間における宗教の役割などの新たな宗教研究の方向性に対して、哲学的考察を用意することが目指される。

2.「宗教学と心理学の共同研究のための基盤構築および実施−日本人の宗教性の解明の提案−」
研究代表者 松島公望
研究分担者 藤井修平

プロジェクト概要
 本研究の目的は,宗教学と心理学の共同研究によって既存の研究では見えてこなかった宗教の側面を明らかにするために,①宗教学と心理学の学際的共同研究を促すための環境を構築し,②心理学的手法による宗教の学際的研究を実施することである。
①.これまでの宗教学における宗教心理学は,主に思想研究として心理学を対象とするものであった。それに対し本研究は心理学的・実証的手法を用いるが,これらの手法に対しては批判の声も多く聞かれる。そこで本研究では,宗教学と心理学の学際的研究を促す環境を構築するため,両者の方法論を批判的に検討し,見解の相違点を明らかにすることにより,両分野の間に架け橋をかけることを試みる。
②.①で得られた成果をもとに,心理学的手法による宗教の学際的研究を実施する。本研究においては,日本人の宗教性の解明を目的とする。すなわち,日本で開発された宗教性尺度の質問項目を素材として日本人の宗教性の洗い出しの作業を行い,その上で,「新たな日本人の宗教性尺度」の開発を行い,その尺度をもとに日本人の宗教性の様相を明らかにする。
 日本人を対象にした宗教性の調査は,1900年の元良勇次郎らの研究に端を発しているが,それ以降に開発された宗教性尺度をすべて収集し(現在,156論文を収集),その質問項目を整理・分類・分析を行うことにより日本人の宗教性の特徴を明らかにする。その上で,「宗教性尺度から新たに見えてきた日本人の宗教性の特徴」と「人文科学分野・各宗教教団で語られてきた日本人の宗教性の特徴」とを突き合わせて,その特徴の違いや共通点を精査する。この作業は,宗教学と心理学の学際的共同研究を促す環境が十全に構築されて初めて遂行できるものである。この作業の成果をもとに開発された「新たな日本人の宗教性尺度」を用いて,「無宗教を自認する群~複数の宗教教団の宗教者群」を対象に質問紙調査を行い,日本人の宗教性の解明の新たな道を示したいと考えている。

奨励賞候補者(2021年度予備審査合格者)

1.「仏教倫理の基礎理論構築にむけた「組織仏教学」の分析」
研究代表者 一色大悟
研究分担者 柳幹康、八尾史、笠松和也、釋道禮

2.「古代世界における宗教的資料に基づく夢概念の分野横断型総合研究」
研究代表者 津田謙治
研究分担者 渡邉蘭子、河島思朗、早瀬篤、藤井崇

3.「世俗化と⾵紀に関する宗教・地域間⽐較:⼀神教社会を中⼼に」
研究代表者 高尾賢一郎
研究分担者 小柳敦史、丸山空大、後藤絵美