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特別パネル「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割――学術会議との対話」開催報告

特別パネル「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割――学術会議との対話」開催報告

日本宗教学会年次大会中、9月9日(日)に本諸学会連合共催パネルを開催いたしました。

御礼を申し上げますとともに、当日の発表・コメントのダイジェスト版(レジュメ)をここに掲載します(発表タイトルをクリックしていただくとpdfファイルが現れます)。

パネルの主旨とまとめ

内容:
挨拶 岡田 真水(日本宗教研究諸学会連合副委員長・日本学術会議哲学委員会幹事)

発表① 藤原 聖子(日本宗教研究諸学会連合幹事・日本学術会議第一部副部長・東京大学教授)
「宗教学会の状況―他分野学会と比較して―」

発表② 斎藤 明(日本印度学仏教学会元理事長・国際仏教学大学院大学教授)
「インド学仏教学は『社会的要請』にいかに応えるのか」

発表③ 土井 健司(日本宗教研究諸学会連合幹事・日本基督教学会専務理事・関西学院大学教授)
「神学・キリスト教学の現状と将来にむけて」

発表④ 土屋 昌明(日本道教学会理事・専修大学教授)
「日本における道教研究の有効性について」

コメンテータ 井野瀬 久美恵(日本学術会議第23期副会長・甲南大学教授)
コメント要旨

 

日本宗教研究諸学会連合企画 懇談会
日本宗教学会男女共同参画若手支援ワーキンググループ
人文・社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会(ギース)
去る9月9日(日)、日本宗教学会第77回学術大会(大谷大学)において、本連合共催パネル「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割―学術会議との対話―」に続き、人文・社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会(ギース)委員長 井野瀬久美恵先生と、日本宗教学会男女共同参画若手支援ワーキンググループのメンバー、日本宗教学会 山中弘会長との懇談会を開催しました。

本連合副委員長 岡田真水先生による挨拶の後、井野瀬先生によるギースの設立目的と活動内容の説明、ワーキンググループの井上まどか委員による報告、ディスカッションが順に行われました。司会は西村明ワーキンググループ委員長が務めました。

井野瀬ギース委員長からの説明
ギース設立の経緯:
昨年5月に発足し、当初加盟学会は4学会だったが、現在は57学会にまで増えた。母体は日本学術会議第一部附置総合ジェンダー分科会である。同分科会と共催でキックオフ・シンポジウムを今年3月に開催した(今後、シンポジウムは定例化し、毎年2~3月に開催する予定)。来る9月28日には第一回の総会を行う。
ギースの活動目標:
いずれの各学会も、意思決定のプロセスに女性会員が少ない点で共通している。そのことが何につながるのかも、これまでほとんど議論されてこなかった。海外ではアファーマティヴ・アクション的なジェンダー平等が当然視されているが、日本ではジェンダー平等の実現度が大学や学会の評価対象になるという「外圧」によって、無理やり取り組まなければならないという感じを持っている人が少なくないかもしれない。しかしながら、実は、学問の質とジェンダー平等は密接に結びついており、この認識がギースの根底にある。
「アンコンシャス・バイアスunconscious bias」という言葉をよく耳にするようになった。知られている事例では、オーケストラ団員の採用にブラインド・オーディションを採用したところ、女性の割合が5~10%から25~46%に上がったことがある。つまり、それまでは女性に対する偏見のため、演奏の質を落としていたことになる。学会誌の査読もダブルブラインドにすると女性の投稿論文の採択率が上がることがさまざまな分野で立証されている。各学協会がそれぞれの学問の質を上げるためにジェンダー平等がいかに必要かという認識を広めることを目ざし、ギースが立ち上がった。さらに、ジェンダー平等の推進を糸口にしながらも、何かあったときに人文社会科学系の学協会が全体で団結する基盤になれればという未来展望もある。

ギース活動内容:
① 基礎データ集めとしての大規模アンケートの実施
データをとるのも、基本的に学問の質がジェンダー平等を必要としているからである。理系の連絡会(男女共同参画学協会連絡会)は2002年に立ち上がり、3~4年に1度アンケート調査を行い、理系学問の世界でジェンダー平等がどのように実現されているか・いないのか、あるいはされたとしたら、それ以外にどのような新しい課題が出たのかなどを数値化している。人文社会科学系はデータがほとんどないため、自分たちを相対化しようにもできない状況にある。若手、女性、LGBTを学会に含めることと学問の質がどう関わるのか、それをデータで示したい。それがないと、日本に未来はないと考える。
② 男女共同参画のためのGood Practiceの共有
シンポジウムや会合、HP等で加盟学会のGood Practiceを順に紹介していくので、それを自分の学会で何ができるかを考えるときの参考に、ツールとして使っていただければと思う。
③ アウトリーチ活動
この懇談会のように、各学会の大会に出向き、その学会の委員等と会合をもったり、ジェンダーをテーマとするシンポジウムに参加・共催したりする。日本哲学会が昨年5月に、学会史上はじめてジェンダーをテーマに掲げるワークショップを行い、それにもギース側から参加した。他の学協会がジェンダーあるいはジェンダー平等というテーマとどう取り組んでいるのか、女性を増やすことが、どう学問の質と関わっているのか、そして若手を増やすことがいかに重要かをわかっていただくため、アウトリーチ活動を行っている。
④ 理系の連絡会との連携
ギースに加盟している学会には、文・理という点では中間的な学会がいくつもある。科学技術社会論学会、科学基礎論学会、日本助産学会などはその好例である。こういった学会が加盟していることをギースの強みとして生かしていきたい。
理系の連絡会に理工系、自然科学系すべての学協会、分野が入っているわけではない。横の連携をこちらからプッシュする形で、日本の学協会全体のジェンダー平等を考えていければと思っている。
井上WG委員からの報告
・日本宗教学会 2018年9月現在の男女共同参画状況は以下の通り。
全会員における女性の比率 20.1%
役員における女性の比率 12.1%
全会員における上級職の割合 男性33.0% 女性5.2%
・2019年度『宗教研究』特集号のテーマとして「ジェンダーとセクシュアリティ」が選ばれた
意見交換
川橋WG委員:宗教研究分野の他学会で10年ほど前に女性委員が学会にジェンダー平等をとり入れることを提案したところ、学問とは相いれないものであるという反応が多数あり、実現しなかった。このワーキンググループの立ち上がりは隔世の感がある。
宗教学会の特殊性は後ろに教団が控えていることである。宗教学会で取り組むべき課題は、ジェンダーの視点をもつ宗教研究が、日本の宗教研究の質をどう変えていけるかということと、ジェンダーの視点をもつ宗教研究が、教団の男性中心主義的な意識をどう変えていけるかということが両輪になっていないと上手く行かないのではないかと思う。女性の役員を増やすことが大事だが、とくにジェンダーやフェミニズムの視点をもった女性を増やすべきである。
女性のキャリアパスを作る際のジェンダーバイヤスという問題についても本気で取り組むべきである。自分の経験では、宗教学会の若手の科研の審査員をやったとき、女性が1人しかいなかった。それは所属がなく、研究者番号がないためである。宗教系大学の(宗教研究の分野での)女性教員の割合が少ないのは特に問題である。

井野瀬:教団に働きかける上でもデータ(他との比較)は有効と考えられる。

西村WG委員長:宗教学会に限られる問題ではないが、海外で学位をとった女性研究者は、日本に戻ってくると、国内の研究ネットワークに入ることができない。研究者番号もとれず、就職も難しい。そのような人材を日本に受け入れる場所がないとなると、学問の質という点でもったいないことをしている。学会が学問交流の場になりきっていないことの認識が必要である。

井野瀬:その問題も数値化できれば手の打ちようが出てくる。率先してデータを出し、他学会にも出してもらうという交流はできないか。

井野瀬:宗教学会の会員であることのメリットはあるのか? 西洋史学会は試練に立たされたことがある。現在、ヨーロッパ史では中・東欧研究に勢いがあり、西欧の研究は全体として勢いが減ってきている。そういった10年前とも20年前とも違う「学問の質」を学会がどう反映しており、それを学会に入ってこようとする若手がどうとらえるのか。そこを西洋史学会は議論しなかったため、一時期、学会誌『西洋史学』への投稿が激減し、出版も危ぶまれた。宗教学会にはそのようなことはないのか。
インクルーシブであるために、共存、共感が重要だと考えている。対話の中でデータを上手く入れると効果がある。たとえば文科省の調査によれば、人文社会科学系修士課程から博士課程への進学率は、平成3年に35.1%だったのが平成20年には20.6%になった。3人に一人は博士課程に進学していた状況が、5人に一人になったわけだ。こうした事実の可視化は必要である。
そのように数値化できるデータをもとに、他の学会や学術会議と、こういった意見交換の会合を年に1回は開き、対話することが重要と考える。

山中会長:宗教学会の会長として本日の議論をふりかえるなら、若手支援、男女の共同参画以上の問題を含んでいると思う。目標は学問の質とジェンダーに置くとしても、もう少し広いスタンスをとり、日本の学術の問題を次々と出し、会員一人一人の問題だと示すことが必要である。
宗教学会で教団的背景がない人は全会員の2割くらいではないか。教団文化がそのまま持ち込まれているということでもあり、学問的トレンドの変化とは無縁に研究を行う人もいる。
宗教学会の特殊性や、博士進学率は全体の問題など、私自身も目が開かれたので、理事会での委員会報告に留めず、WGの活動に多様な会員を巻き込むことが課題であろう。

懇親会の様子