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2018年公開シンポジウム「科学技術の進展と人間のアイデンティティ—哲学・倫理・思想・宗教研究からの問いかけ—」

日本学術会議哲学委員会主催公開シンポジウム
「科学技術の進展と人間のアイデンティティ—哲学・倫理・思想・宗教研究からの問いかけ—」
共催:日本宗教研究諸学会連合、日本哲学系諸学会連合

日時:平成30年11月23日(金・祝)13:30-17:00
会場:日本学術会議講堂(千代田線乃木坂駅)

開催趣旨:
さまざまな最先端テクノロジーのニュースがインターネットや新聞、テレビを賑わせている。そのような技術が普及したらさぞ便利であろうと思う反面、不安もよぎる。もっとも、技術に良い面と悪い面の両面があるというのは、いまに限った話ではない。自動車は移動の利便性をもたらす一方で、事故、大気汚染、地球環境問題を引き起こした。しかし、現代の最先端技術がもたらす「不安」の中には、これまでとは毛色の変わったもの、見方によってはこれまで以上に深刻なものが含まれるようになってきているように思われる。それはすなわち、「私たちのアイデンティティが脅かされるのではないか」という不安である。
多種多様な監視テクノロジーは私たちのプライバシーを脅かしている。ネット上で多くの「人格」を使い分けてコミュニケーションをしている私の「本当の自分」とは何か。AIやロボットたちとの共存は、「万物の霊長」、この世でもっとも知的な存在としての人間理解を脅かすかもしれない。私と私のクローンの違いは何か。私の能力を人工的な手段で増強するエンハンスメント技術は、私に固有なもの、私らしさを脅かすだろうか。さらには、ゲノム編集技術は、もっとも私に固有なものと思われている「私の遺伝子」を自在に編集する技術である。
こうしたテクノロジーは、私とは何者か、何が私を私にしているのか、人間を人間たらしめているものは何かといった問い、つまり「人間のアイデンティティ」に関わる問いをあらためて引き起こす。そして、これこそ哲学・倫理・思想・宗教がたえず問い続けてきた問いである。この問いを中心に、哲学、倫理学、宗教学の研究者がそれぞれの知見をもとに問題提起をし、学術会議副会長(第三部)をお招きして対話を行う。

司会:岡田真美子(日本学術会議第一部会員、兵庫県立大学名誉教授)

開会挨拶:戸田山和久(日本学術会議第一部会員、名古屋大学大学院情報科学研究科教授)

報告1 田坂さつき(日本学術会議連携会員、立正大学文学部教授)
「ゲノム編集をめぐる倫理問題」

報告2 奥田 太郎(日本学術会議連携会員、南山大学人文学部教授)
「何が同一であれば人間は変化に耐えうるか:人新世+トランスヒューマニズム+Post-Truthと倫理学」

報告3 林  文孝(立教大学文学部教授)
「『太極図説』における「人」」

報告4 芦名 定道(日本学術会議連携会員、京都大学大学院文学研究科教授)
「宗教にとって科学技術とは何か?─人格概念の再考のために─」

コメント1 渡辺美代子(日本学術会議副会長、同第三部会員、国立研究開発法人科学技術振興機構副理事)

コメント2 小林 傳司(日本学術会議第一部会員、大阪大学教育研究総括理事・副学長)
ディスカッション

閉会挨拶:藤原 聖子(日本学術会議第一部会員、東京大学大学院人文社会系研究科教授)

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特別パネル「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割――学術会議との対話」開催報告

特別パネル「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割――学術会議との対話」開催報告

日本宗教学会年次大会中、9月9日(日)に本諸学会連合共催パネルを開催いたしました。

御礼を申し上げますとともに、当日の発表・コメントのダイジェスト版(レジュメ)をここに掲載します(発表タイトルをクリックしていただくとpdfファイルが現れます)。

パネルの主旨とまとめ

内容:
挨拶 岡田 真水(日本宗教研究諸学会連合副委員長・日本学術会議哲学委員会幹事)

発表① 藤原 聖子(日本宗教研究諸学会連合幹事・日本学術会議第一部副部長・東京大学教授)
「宗教学会の状況―他分野学会と比較して―」

発表② 斎藤 明(日本印度学仏教学会元理事長・国際仏教学大学院大学教授)
「インド学仏教学は『社会的要請』にいかに応えるのか」

発表③ 土井 健司(日本宗教研究諸学会連合幹事・日本基督教学会専務理事・関西学院大学教授)
「神学・キリスト教学の現状と将来にむけて」

発表④ 土屋 昌明(日本道教学会理事・専修大学教授)
「日本における道教研究の有効性について」

コメンテータ 井野瀬 久美恵(日本学術会議第23期副会長・甲南大学教授)
コメント要旨

 

日本宗教研究諸学会連合企画 懇談会
日本宗教学会男女共同参画若手支援ワーキンググループ
人文・社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会(ギース)
去る9月9日(日)、日本宗教学会第77回学術大会(大谷大学)において、本連合共催パネル「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割―学術会議との対話―」に続き、人文・社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会(ギース)委員長 井野瀬久美恵先生と、日本宗教学会男女共同参画若手支援ワーキンググループのメンバー、日本宗教学会 山中弘会長との懇談会を開催しました。

本連合副委員長 岡田真水先生による挨拶の後、井野瀬先生によるギースの設立目的と活動内容の説明、ワーキンググループの井上まどか委員による報告、ディスカッションが順に行われました。司会は西村明ワーキンググループ委員長が務めました。

井野瀬ギース委員長からの説明
ギース設立の経緯:
昨年5月に発足し、当初加盟学会は4学会だったが、現在は57学会にまで増えた。母体は日本学術会議第一部附置総合ジェンダー分科会である。同分科会と共催でキックオフ・シンポジウムを今年3月に開催した(今後、シンポジウムは定例化し、毎年2~3月に開催する予定)。来る9月28日には第一回の総会を行う。
ギースの活動目標:
いずれの各学会も、意思決定のプロセスに女性会員が少ない点で共通している。そのことが何につながるのかも、これまでほとんど議論されてこなかった。海外ではアファーマティヴ・アクション的なジェンダー平等が当然視されているが、日本ではジェンダー平等の実現度が大学や学会の評価対象になるという「外圧」によって、無理やり取り組まなければならないという感じを持っている人が少なくないかもしれない。しかしながら、実は、学問の質とジェンダー平等は密接に結びついており、この認識がギースの根底にある。
「アンコンシャス・バイアスunconscious bias」という言葉をよく耳にするようになった。知られている事例では、オーケストラ団員の採用にブラインド・オーディションを採用したところ、女性の割合が5~10%から25~46%に上がったことがある。つまり、それまでは女性に対する偏見のため、演奏の質を落としていたことになる。学会誌の査読もダブルブラインドにすると女性の投稿論文の採択率が上がることがさまざまな分野で立証されている。各学協会がそれぞれの学問の質を上げるためにジェンダー平等がいかに必要かという認識を広めることを目ざし、ギースが立ち上がった。さらに、ジェンダー平等の推進を糸口にしながらも、何かあったときに人文社会科学系の学協会が全体で団結する基盤になれればという未来展望もある。

ギース活動内容:
① 基礎データ集めとしての大規模アンケートの実施
データをとるのも、基本的に学問の質がジェンダー平等を必要としているからである。理系の連絡会(男女共同参画学協会連絡会)は2002年に立ち上がり、3~4年に1度アンケート調査を行い、理系学問の世界でジェンダー平等がどのように実現されているか・いないのか、あるいはされたとしたら、それ以外にどのような新しい課題が出たのかなどを数値化している。人文社会科学系はデータがほとんどないため、自分たちを相対化しようにもできない状況にある。若手、女性、LGBTを学会に含めることと学問の質がどう関わるのか、それをデータで示したい。それがないと、日本に未来はないと考える。
② 男女共同参画のためのGood Practiceの共有
シンポジウムや会合、HP等で加盟学会のGood Practiceを順に紹介していくので、それを自分の学会で何ができるかを考えるときの参考に、ツールとして使っていただければと思う。
③ アウトリーチ活動
この懇談会のように、各学会の大会に出向き、その学会の委員等と会合をもったり、ジェンダーをテーマとするシンポジウムに参加・共催したりする。日本哲学会が昨年5月に、学会史上はじめてジェンダーをテーマに掲げるワークショップを行い、それにもギース側から参加した。他の学協会がジェンダーあるいはジェンダー平等というテーマとどう取り組んでいるのか、女性を増やすことが、どう学問の質と関わっているのか、そして若手を増やすことがいかに重要かをわかっていただくため、アウトリーチ活動を行っている。
④ 理系の連絡会との連携
ギースに加盟している学会には、文・理という点では中間的な学会がいくつもある。科学技術社会論学会、科学基礎論学会、日本助産学会などはその好例である。こういった学会が加盟していることをギースの強みとして生かしていきたい。
理系の連絡会に理工系、自然科学系すべての学協会、分野が入っているわけではない。横の連携をこちらからプッシュする形で、日本の学協会全体のジェンダー平等を考えていければと思っている。
井上WG委員からの報告
・日本宗教学会 2018年9月現在の男女共同参画状況は以下の通り。
全会員における女性の比率 20.1%
役員における女性の比率 12.1%
全会員における上級職の割合 男性33.0% 女性5.2%
・2019年度『宗教研究』特集号のテーマとして「ジェンダーとセクシュアリティ」が選ばれた
意見交換
川橋WG委員:宗教研究分野の他学会で10年ほど前に女性委員が学会にジェンダー平等をとり入れることを提案したところ、学問とは相いれないものであるという反応が多数あり、実現しなかった。このワーキンググループの立ち上がりは隔世の感がある。
宗教学会の特殊性は後ろに教団が控えていることである。宗教学会で取り組むべき課題は、ジェンダーの視点をもつ宗教研究が、日本の宗教研究の質をどう変えていけるかということと、ジェンダーの視点をもつ宗教研究が、教団の男性中心主義的な意識をどう変えていけるかということが両輪になっていないと上手く行かないのではないかと思う。女性の役員を増やすことが大事だが、とくにジェンダーやフェミニズムの視点をもった女性を増やすべきである。
女性のキャリアパスを作る際のジェンダーバイヤスという問題についても本気で取り組むべきである。自分の経験では、宗教学会の若手の科研の審査員をやったとき、女性が1人しかいなかった。それは所属がなく、研究者番号がないためである。宗教系大学の(宗教研究の分野での)女性教員の割合が少ないのは特に問題である。

井野瀬:教団に働きかける上でもデータ(他との比較)は有効と考えられる。

西村WG委員長:宗教学会に限られる問題ではないが、海外で学位をとった女性研究者は、日本に戻ってくると、国内の研究ネットワークに入ることができない。研究者番号もとれず、就職も難しい。そのような人材を日本に受け入れる場所がないとなると、学問の質という点でもったいないことをしている。学会が学問交流の場になりきっていないことの認識が必要である。

井野瀬:その問題も数値化できれば手の打ちようが出てくる。率先してデータを出し、他学会にも出してもらうという交流はできないか。

井野瀬:宗教学会の会員であることのメリットはあるのか? 西洋史学会は試練に立たされたことがある。現在、ヨーロッパ史では中・東欧研究に勢いがあり、西欧の研究は全体として勢いが減ってきている。そういった10年前とも20年前とも違う「学問の質」を学会がどう反映しており、それを学会に入ってこようとする若手がどうとらえるのか。そこを西洋史学会は議論しなかったため、一時期、学会誌『西洋史学』への投稿が激減し、出版も危ぶまれた。宗教学会にはそのようなことはないのか。
インクルーシブであるために、共存、共感が重要だと考えている。対話の中でデータを上手く入れると効果がある。たとえば文科省の調査によれば、人文社会科学系修士課程から博士課程への進学率は、平成3年に35.1%だったのが平成20年には20.6%になった。3人に一人は博士課程に進学していた状況が、5人に一人になったわけだ。こうした事実の可視化は必要である。
そのように数値化できるデータをもとに、他の学会や学術会議と、こういった意見交換の会合を年に1回は開き、対話することが重要と考える。

山中会長:宗教学会の会長として本日の議論をふりかえるなら、若手支援、男女の共同参画以上の問題を含んでいると思う。目標は学問の質とジェンダーに置くとしても、もう少し広いスタンスをとり、日本の学術の問題を次々と出し、会員一人一人の問題だと示すことが必要である。
宗教学会で教団的背景がない人は全会員の2割くらいではないか。教団文化がそのまま持ち込まれているということでもあり、学問的トレンドの変化とは無縁に研究を行う人もいる。
宗教学会の特殊性や、博士進学率は全体の問題など、私自身も目が開かれたので、理事会での委員会報告に留めず、WGの活動に多様な会員を巻き込むことが課題であろう。

懇親会の様子

日本宗教学会第77回学術大会(大谷大学)におけるパネル発表のご案内

2018年度日本宗教学会第77回学術大会(大谷大学)において、日本宗教学会・宗教研究諸学会連合共催パネルを開催いたします。

パネル題目「宗教研究の振興と学会・学会連合の役割―学術会議との対話―」

日時:2018年9月9日(日)13:15~15:15
場所:大谷大学本部キャンパス慶聞館 K214教室
〒603-8143 京都市北区小山上総町
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線 国際会館行「北大路」駅上
詳細は大谷大学のサイトにてご確認ください。
http://www.otani.ac.jp/nab3mq0000004vfa.html

参加方法:本諸学会連合加盟学会の会員の方は、開催日から1週間前までに、本諸学会連合事務局にメール(jfssr20084@gmail.com)でお申し込みいただければ、無料でご参加いただけます。 (それ以外の方は、当日、宗教学会大会受付で参加費1000円をお支払いください。)

内容:
挨拶 岡田 真水(日本宗教研究諸学会連合副委員長・日本学術会議哲学委員会幹事)

発表① 藤原 聖子(日本宗教研究諸学会連合幹事・日本学術会議第一部副部長・東京大学教授)
「宗教学会の状況―他分野学会と比較して―」

発表② 斎藤 明(日本印度学仏教学会元理事長・国際仏教学大学院大学教授)
「インド学仏教学は『社会的要請』にいかに応えるのか」

発表③ 土井 健司(日本宗教研究諸学会連合幹事・日本基督教学会専務理事・関西学院大学教授)
「神学・キリスト教学の現状と将来にむけて」

発表④ 土屋 昌明(日本道教学会理事・専修大学教授)
「日本における道教研究の有効性について」

コメンテータ 井野瀬 久美恵(日本学術会議第23期副会長・甲南大学教授)

要旨

この数年間、政府の科学技術イノベーション戦略の裏で進む、文系諸学や基礎研究の軽視が問題化されている。この状況に対して、個々の大学だけでなく、学会が連携して取り組めることはないだろうか。宗教研究の基盤を維持し、さらなる発展を図るために、関連学会と日本宗教研究諸学会連合は何ができるだろうか。
これまでのところ、「文系の危機」は大学、なかでも国公立大学の文系学部廃止論としてもっぱら議論されている。ところが、他の人文諸学に比べ、宗教研究の特徴の一つは、必ずしも大学ばかりを研究機関とはしておらず、学会の会員にも大学に所属せずに研究している者が少なからず含まれているということである。よって、2015年の文科相による「6.8通知」の受け止め方も、宗教研究関連学会のなかでは一様ではない。大学のポストが先細るなかで、宗教研究の諸学会はオルタナティヴな研究の生き延び方を示しているのか、それとも別の形での梃入れを必要としているのか。
こういった根本的な問題を考察する手がかりとして、本パネルは、日本学術会議第一部(人文・社会科学部門)から2017年に発出された提言「学術の総合的発展をめざして―人文・社会科学からの提言―」http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t242-2.pdf(以下、「2017提言」と表記)への応答という形で進める。
すなわち、各発表者はそれぞれ日本印度学仏教学会、日本基督教学会、日本道教学会、日本宗教学会(日本宗教研究諸学会連合の運営委員会を構成する諸学会)について、
・当学会の宗教研究は、2017提言で掲げられたような社会的要請(狭義の「社会のニーズ」ではなく、「目には見えにくくても、長期的な視野に立って知を継承し、多様性を支え、創造性の基盤を養うという役割を果たす」こと)に応えている/応えることができる
・そのように役割を果たしていることを、対外的にこのように説明・アピールしている
・当学会の宗教研究は、大型の研究資金、設備をこのようなところで必要としている
・当学会は、学会の活性化、研究の振興のためにこのような試みを行っている
・当学会は、若手研究者育成のためにこのような試みを行っている
・当学会は、女性研究者支援のためにこのような試みを行っている
といった、2017提言の主要な論点のうちいくつかに絞って、自らの考えるところと学会の状況について報告する。それを通して、必要性は認識されているが手を打てていない課題に関して、学会間の横の連携や学術会議との連携により取り組むことができる部分を抽出していく。
進め方としては、まず第1発表者の藤原が、パネルの趣旨、2017提言と日本宗教学会の特徴を他分野学会と比較しながら説明した後、
第2発表者の斎藤氏は、日本印度学仏教学会の取り組みと、斎藤氏自身が手がけてきた翻訳に関するプロジェクト(バウッダコーシャ)を一例として、インド学仏教学は「社会的要請」にいかに応えるか、またその際に直面する課題はなにか、について再考する。
第3発表者の土井氏は、日本基督教学会の改革の状況と新しいプロジェクトを紹介した上で、数量化、可視化、結果主義とも言うべきものが力をもつ社会において、神学・キリスト教学という学問の有り様を「説得力」という視点から再検討する。
第4発表者の土屋氏は、中国宗教(とくに道教)研究の社会的必要性について、日本あるいは日本人の立場から研究する有効性(宗教文化史的観点、国際交流的観点など)および普遍的で現代的な観点(環境問題の考え方など)から研究する有効性について論じる。
コメンテータには、2017提言作成において中心的役割を果たされた、日本学術会議前副会長・井野瀬久美恵氏をお招きし、連携の可能性を具体的・現実的に議論する。